出題傾向
神戸大学経済学部編入試験では、専門科目と英語が課されます。専門科目では、経済学、経済数学及び小論文の中から2問を選択し、解答します。
経済学では、ミクロ経済学及びマクロ経済学の基礎的な問題が出題されます。一般的な経済学の基礎知識を身につけていれば、合格レベルの解答を作成することはさほど難しくはないでしょう。
英語は京都大学や大阪大学の編入試験に比べれば比較的易しめの問題が出題されます。辞書の持込が可能なので、解答作成は比較的楽に感じるでしょう。ただし、基礎的な問題ほど、ケアレスミスが致命的な失点につながります。正確な回答作成を行うことが、合格への鍵となるでしょう。
対策
神戸大学経済学部は他大学に比べて倍率が高い傾向にあります。経済学に関しても英語に関しても、他の受験生が解答できるような問題を、どれだけミスなく正確に解答できるかが、合格の鍵を握ることは間違いありません。
したがって、難解な問題を解けるようになる必要はありませんが、基礎的な計算問題や記述問題を繰り返し練習し、ケアレスミスを減らす努力をすることが肝心になります。
また、小論文については、自分の意見を合理的に説明する能力が求められます。小論文の回答作成においては、「型」に沿った記述がもとめられます。そのためには、実際に手を動かして何度も論文を書いてみるというトレーニングが必要になります。
また、小論文の内容を充実させるには、背景知識の習得が必要になります。経済学や小論文の試験対策として経済学の背景知識を付けておくことは、京大のような難解な英語を解く際の重要な基礎知識にもなります。おすすめは次のような文献です。京大の英語対策とも重複するので、是非とも読み込んでおくことをお勧めします。
まずは、小室先生の『経済学をめぐる巨匠たち』。小室先生は、ご自身が「経済学の巨匠」だと言ってよいくらい、日本でも有数の在野の経済学者でした。この人が、経済学の初学者向けに、学問的体系をわかりやすく解説したのが、この本です。非常に面白い本なので、気に入ったら、最初から最後まで通して読んでほしい一冊ですが、時間がないという人は、一部だけでも開いて読んでおいてください。(詳しくはこちら)
次は、八木先生の『経済思想』です。八木先生は、数年前に京大を退官されましたが、日本におけるオーストリア学派の権威的な存在でした。八木先生の研究成果は、経済学史から進化経済学まで幅広く、その影響は現在の京大経済学部にも色濃く残っていると言えます。神戸大学でも、経済思想や進化経済学を研究されている先生がいます。八木先生の本を読みこんでおくことは、神戸大受験にも役に立つはずです。(詳しくはこちら)
論述問題対策の極めつけは、この本『経済学とは何だろうか』です。この本は、隠れた名著とでも言うべきでしょうか。近代経済学に批判的な視点を得るための劇薬のような本です。ミクロ経済学とマクロ経済学の勉強を一通り終えたら、是非この本を読んでみてください。おそらく今まで読んできた本とは一味も二味も違う、真の学問的視点を体感することができるはずです。この本がなぜ神戸大学対策に効果的か、次を読んでみてください。佐和隆光『経済学とは何だろうか』
さて、問題は、英語です。編入試験一般について言えることですが、合否を分けるのは、経済学よりもむしろ英語であると考えるべきでしょう。英語は、長文全訳問題、部分訳問題、説明問題など、多様な形式で出題されます。ただし、ほとんどが和訳問題です。したがって、試験対策の勉強としては、過去問をひたすら全訳しておくというのが望ましいです。
編入試験の難しいところは、英語として出題される内容が、高度な専門知識を要求する経済学の文献だということです。その内容は難解で、背景知識がなければ正確に読むこともできません。
そして、何より厄介のなのは、英語の試験として出題される経済学の文献が、ミクロ経済学・マクロ経済学に限定されず、社会経済学(マルクス経済学)、経済史、経済学史、経営学など、多岐にわたっているということです。つまり、編入試験に合格するには、英語で高得点を取らねばならず、そのためには、ミクロ・マクロだけでなく、幅広い経済学の知識を習得しておかなければならないということです。
したがって、単に英語の勉強をするだけでなく、経済学全般の日本語文献も読み込んでおくことが、合格への近道だと言えます。神戸大の出題傾向を考えれば、次のような本に目を通しておくと、英語の試験にとってもプラスになる基礎知識が付くでしょう。もちろん、これらの本を読みこんでおくことは、神戸大学だけでなく、名古屋大学その他の小論文試験にも大いに役立ちます。
まずは、小室先生の『経済学をめぐる巨匠たち』。小室先生は、ご自身が「経済学の巨匠」だと言ってよいくらい、日本でも有数の在野の経済学者でした。この人が、経済学の初学者向けに、学問的体系をわかりやすく解説したのが、この本です。非常に面白い本なので、気に入ったら、最初から最後まで通して読んでほしい一冊ですが、時間がないという人は、一部だけでも開いて読んでおいてください。(詳しくはこちら)
次に、田中先生の『原点探訪:アダムスミスの足跡』です。著者の田中秀夫先生は「スコットランド啓蒙思想史」の研究をされており、数年に一度、京大でも編入試験の問題作成を担当されていたようで、いかにも田中先生らしい問題が出題されていました。スコットランド啓蒙というのは、アダム・スミスの思想を育んだ1600年代のスコットランドの思想家たちの考えの総称です。アダムスミスに影響をあたえた思想家として、ヒュームやファーガソンの名を挙げることができますが、本書を通じて、これらの学者の思想を理解しておくとよいでしょう。(詳しくはこちら)神戸大学には、京大出身の研究者が多数在籍しています。編入試験を受ける上では、こうした学者の思想に触れておくのが良いでしょう。
次は、八木先生の『経済思想』です。八木先生は、日本におけるオーストリア学派の権威的な存在でした。八木先生の研究成果は、経済学史から進化経済学まで幅広く、その影響は現在の関西圏の経済学研究に色濃く残っていると言えます。なぜなら、今でも京大や神戸大、名古屋大には、進化経済学の研究をリードする有名な研究者が多数在籍しているからです。その意味で、八木先生の本に目を通しておくことは、神戸大の経済学部編入を志す場合に、避けては通れない道と言えるでしょう。最も読みやすく、編入試験対策にも大いに役立つ本がこの『経済思想』です。(詳しくはこちら)
また、以下に挙げる本も、編入試験の英語、小論文対策としては、非常に有効です。是非、手に取って読んでみてください。